ステロイドの功罪

「ステロイドは効くのか?」と問われれば、「適応を誤らなければ効く薬」と答えるだろう。効かない病気に使っても、効かないものは効かない。当たり前のこと。ステロイドには飲み薬もあれば、塗り薬もある。さらに注射薬もあるし、吸入薬もある。ステロイドのもたらした恩恵は、非常に大きなものがある。多くの命を救ってきた。しかし、副作用のない薬はなく、使い方を誤ると、副作用が大きな問題となる。当然薬は「役にもなるし、害にもなる」。
ステロイドはネフローゼ、腎炎、膠原病、悪性腫瘍など、多くの病気に使われ、有効性が認められている。前のブログで低身長の問題を取り上げたが、喘息で吸入用のステロイドは多くの患者さんのQOLを改善し、普通の生活を可能にした。命に関わる喘息発作で、ステロイドの点滴は非常に有効で、多くの命を救ったのも事実。アナフィラキシーショックの時も、ステロイドの静注は定番である。
軟膏もひどい虫刺されから、接触性皮膚炎(かぶれ)などにも、ステロイドの軟膏が使われてきた。このような急性の病気には、ステロイドは有効であり、短期使用については、副作用は問題にならない。今回の「ステロイドが入っていない軟膏」騒動は、いくつかの教訓を残した。
1)ステロイドはアトピーに有効である。特に強いステロイドは。
2)ステロイドを急に止めると、症状が急激に悪化する。いわゆるリバウンド。
3)強いステロイドが入っているにもかかわらず、ステロイドは入っていないという説明で、高額の軟膏を売りつけるのは犯罪である。
4)中国3000年の歴史と称して、ステロイドが入っていないと信じて、薬を売りつけるのは、善意の第三者である?
5)ステロイドが入っていると本当に知らなかったのか、知っていて嘘の説明をしたのか、入っていると疑っていたが確証がもてないまま売りつけていたのかを、証明する事は困難である。
6)今回の事例は氷山の一角であり、効く薬にはステロイドが入っていると考えるべきである。
7)できる限りステロイドを使いたくないと思っている、アトピーの患者さんが多く存在する。アトピー治療のガイドラインは、ステロイド一色である。強いステロイドから始めて、症状が良くなったら弱いステロイド。症状がなくなっても、2年間ぐらいは弱いステロイドを塗り続けよう。私には正気の沙汰とは思えないのだが。
8)ガイドラインでステロイドの使用は公認されている。にもかかわらず、「ステロイドが入っていない」と説明した背景には、タダ同然ののステロイドを高く売りつける意図があったと疑われる。
この8点が、今回の意味する所である。私は0歳や1歳児には、基本的にステロイドを使う事はしない。だいたい効かない。効いても一時的。良くなっても塗り続ける、異常なケースを除いては、悪化する場合が多い。塗っても副作用がないとは思わない。塗り続けた子供の皮膚を見ると、塗っていたかはすぐにわかる。止めると悪化するのは、今回の問題で明らかである。
「アトピーの第一選択はステロイド。良くなっても塗り続けよう」という国のガイドラインに、今回の問題は、基本的な疑問を投げかけている。「嘘をついて、高い薬を売りつけた」という、単なる詐欺事件と考えるのは、大きな間違いではないだろうか?