EBウイルス感染症

EBウイルスとはEpstein-Barr virusの略。日本人は幼少期にかかることが多く、思春期以降で罹患した場合には伝染性単核球症(俗称デンタン)と呼ぶ。キスによって伝染するので、kissing diseaseとも言う。小児の場合には、EBウイルス感染症。
症状は高熱と、扁桃腺の化膿、頸部のリンパ節腫大、発疹などであり、血液検査で肝機能障害や、白血病細胞に類似した異型リンパ球を認める。重い病気の1つであり、年に10例から20例ぐらい遭遇する。診断は抗体検査で簡単にできる。採血して3日後には確定診断。外注(コマーシャルラボという)で検査できるのだから、便利な世の中になったと思う。
今朝、京大のウイルス研におられた日沼頼夫先生が亡くなられてと知った。以前に、「日沼先生の授業を受けた記憶はある?」と家内に聞いたことがある。家内は「記憶にない」との返事。私も記憶にないのだが、私の場合は、授業に出ていないので信用できない。私が卒業した翌年に、教授として赴任されたようで、少し安心したのだが。
日沼先生はT細胞白血病が、HTLというウイルスで起こることを突きとめた。ウイルスが癌を起こすことを、世界で初めて証明し、文化勲章を受章した先生。ノーベル賞を受賞するのでは?と思っていた。この日沼先生の専門がEBウイルスの研究であった。
1982年に発熱、発疹、リンパ節腫大の患者さんが2名入院してきた。主治医の私はEBウイルス感染を疑ったが、確定診断が出来ない。そこで、抗体検査を依頼したいと思い、日沼先生に直接電話した。先生は快く依頼を受諾してくれた。私は患者さんの急性期と回復期の血清を持って、新幹線で京都に向かった。
先生と15分ぐらい話をしただろうか。小柄で温和な印象を受けた。東北大学出身で、小児科を専攻し、ウイルス学に興味を持ったとのこと。持参した血清で、2名ともEBウイルス感染症と診断できた。享年90歳。私の親の世代である。一度しかお会いすることはなかったが、あの時に快く検査を引き受けて頂いたことを、今でも感謝している。